コラム
これからの外壁における
維持保全技術に求められるもの
建物は長い年月を経過して味わい深くしつつ、その歴史的価値を評価されるものであります。
昨今、ビルのロングライフ化に非常に関心が高まる中で、外壁における維持保全技術に求められるものは材料及び素材の性能を極限まで発揮させ、さらには社会情勢の変化や災害時に対応できる付加価値であると考えます。
近年、頻発する地震被害を直視し認識したことは、想定外の力が建物外壁に与える影響を考える際に、単なる経年劣化を原状・回復する技術だけでは命はもとより人の安全は保たれないという現実です。
そのような観点から弊社は、新しい維持保全技術の開発に際し、決して斬新な新工法の開発だけでなく外壁を構成する材料や使用する素材の性能を理解し、その性能を効果的に発揮できる技術とその要求品質を忠実に施工現場で具現化する仕組みの構築に取り組みました。
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現存する世界最古の鉄筋コンクリート建造物は、1903年に完成したパリのフランクリン街のアパート(写真1)で、115年以上経過しています。また、100年を経年するコンクリート構造物が多数現存しており高い耐久性が確認されている素材です。
さらに外壁仕上げに使用されるタイルは4650年前のもの(写真2)も現存しており、最も耐光性・耐火性・防火性・耐久性に優れた建築仕上げ材料として、建築物の壁や床面を保護する機能を持っています。
エポキシ樹脂は、日本で既に60年以上の歴史を持っており、1967年には現在世界遺産にもなっている大正末期に建築された施設の第一回保存工事に大量に使用された例が有名で、当該施設を永久保存するという観点から経年での性能試験の比較がなされた結果、エポキシ樹脂が現時点で50年以上の耐久性を有することが実証されています。
アンカーピンの素材であるステンレス鋼は、表面に緻密で強固な不動態皮膜を形成することにより、耐食性が保持されるもので、内陸部や淡水接触下のような一般の自然環境においては不動態皮膜により保護され耐久性が保たれる素材です。
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弊社は、これらの材料及び素材の持つ高い耐久性と素材の性能を、最大限に発揮できる技術と、その技術を施工現場で具現化する仕組みが、ビルのロングライフ化におけるこれからの外壁改修技術の基本要件であり、その結果、現存する貴重な建築資産を人に安全で安心な施設として次の世代に残すことが外壁における維持保全技術に課せられた使命と理解し、日々技術革新に向け邁進します。