地震に強い壁をつくる
今求められている「地震に強い壁」
非構造部材である外壁の耐震化は重要です。
近年、国の中央防災会議においては、2011年の東日本大震災を踏まえ、首都直下地震、南海トラフ地震等の被害想定と対策の見直しの中で、建築物ストックの耐震診断や耐震改修を一層推進すべきとの指導があります。
実際に東日本大震災において発生した甚大な被害【写真1】の中には非構造部材(外壁、天井、設備)に、その耐震性能が問われるような事故が多数発生し、従来型の維持保全行為の信頼性が損なわれた結果、耐震診断や大規模天井の耐震化等の法案が整備され、強度の見直し等、設計変更がなされているのが現状です。
弊社が、2011年に発生した東日本大震災と、2016年に発生した熊本地震後にて、現場検証を行った結果、躯体構造が無事でも外壁を始めとする非構造部材には大きな被害が多数発生していました。【写真2】
建物外壁が損傷【写真3】すると、高い所から重量物が落下【写真4, 5】するため、人命保護の観点から地震時の落下対策が重要となります。
躯体構造の耐震化は着実に向上していますが、非構造部材である外壁の耐震化が喫緊の課題であると考えます。
弊社は、建築物等の外壁タイル改修技術において、開発当初から「高強度・高耐久性」に取り組んでおり、早くからその性能を実証してきました。
■ハイブリッドクイック工法 樹脂拡散試験状況(官庁施設)
■ハイブリッドクイック工法 実施工現場(文化財)におけるステンレスアンカーピン引抜き試験状況
ハイブリッドクイック工法を構成する洗浄穿孔システム、特殊ノズルを用いた樹脂注入システムはコンクリート構造体に定着したハイブリッドピンに高い引抜き耐力を発現させており、その数値は表1に示す通り公的機関公表数値と比較しても高い優位性が実証されています。この結果は、地震時に壁面に作用する水平力に対する保持性能の優位性の高さを示すものです。
表1 ピン引抜き耐力比較表
ハイブリッドクイック工法は、その耐久性能について公的認定試験及び民間研究機関(技術研究所)の試験を通じ表2に示す通り検証・確認しています。表3に示す通り、各耐久性試験の結果においては、国土交通省基準値を大幅に上回っており、ハイブリッドクイック工法の高強度施工は、経年しても衰えることなく維持され、これは耐震性能の耐久性にもつながります。
表2 ハイブリッドクイック工法の耐久性試験内容
表3 ハイブリッドクイック工法の耐久性試験結果
ハイブリッドクイック工法の耐震性能を示す実例
数多くある建物管理団体の一団体である、一般社団法人マンション管理業協会の調査公表によると、2016年4月の熊本地震により、協会が管理する熊本県内572棟の既存建物のうち527棟、およそ92.1%が何らかの被害を受けている結果となっています(被害の内訳は表4を参照)。国土交通省の統計(平成28年度推計)によると、熊本県内での建築ストック総件数(RC・SRC)は、5968棟。この内約92.1%(表4)が被害を受けていると仮定した場合、想定される潜在的な被害棟数は、約5497棟に及ぶと推測されます。
表4 熊本地震の被害状況
表5 HQ工法検証結果
そこで弊社は、熊本地震発生以前に外壁改修工事を行った熊本県内54棟の中で、震度6以上の地域を対象とした45棟の地震被害状況を調査し、耐震性能の検証を行いました(表5参照)。その結果、地震以前にハイブリッドクイック工法にて外壁改修工事を完了している施設すべての施工部が、健全な状態であることが確認されています。
熊本地震、東日本大震災においても本工法の施工部は損壊ゼロ
弊社は、これまで平時及び地震時(災害時)に発生した外壁剥落事故をその都度検証し、地震及び災害に強い外壁改修技術開発に取り組んできました。
近年、首都直下地震、南海トラフ地震等を始めとする災害リスクが高まる中、熊本地震被害状況検証結果においても実証された耐震性能が、今社会が求める「地震に強い壁」を構築し、震災に備えたこれからの外壁改修技術と考えます。
今回の検証を含め、東日本大震災をはじめ、近年に発生した強い地震においても本工法の施工部は損壊ゼロであり、高い耐震性能を示しています。これらの事実と、現在2200棟以上の技術採用施設においても無事故であることから、社会的にも安全で安心な震災に備えた外壁改修技術として、近年高い評価を頂いています。
評価委員会
坂本 功 | 委員長 | [東京大学 名誉教授] |
川瀬 貴晴 | 委員 | [千葉大学 名誉教授] |
北山 和宏 | 委員 | [東京都立大学大学院 教授] |
清家 剛 | 委員 | [東京大学大学院 教授] |
南 一誠 | 委員 | [芝浦工業大学 名誉教授] |
池田 憲一 | 委員 | [東京理科大学 教授] |